すみっこCE

医療界で、すみっこで細々と活躍する「臨床工学技士」。職務を全うする中で得た知識をアウトプットするためのブログ。

犬・猫の血液透析?

f:id:muscleCE:20170405220323j:plain

「うちの子見て!めっちゃ可愛いから」

そう言って彼女は”L”と”V”が交差したロゴの入った高級バックからスマホを取り出した。

彼女とは今日で会うのが、3回目である。

すこしふっくらとした体型とその無邪気な笑顔は、私の”どストライク”であり、彼女に対し、好意を抱いていた。

しかし、彼女が4つ年上であることから、その発言に対し、「まさかの子持ちではないか」と疑念が湧いたその時、スマホに写し出されたのは、彼女同様に、無邪気で愛くるしい”ダックスフンド”であった。

 

「犬・猫の数がこどもより多い?」

子供の頃、よく見かけた玄関先でくさりにつなげられ犬や、顔に傷をつけながらゴミをあさる猫など、今ではあまり目にかかることはない。今や犬や猫は家族同然の扱いを受け、ドックカフェやエステなども存在する。室内で飼うのが主流で一部のセレブなんて、犬や猫にマンションの一室を使うなど、あの頃と比べてみれば、犬や猫の扱いも随分と変わった。

 

2015年の全国犬猫飼育実態調査によると、全国の犬・猫の飼育数は約2000万となり、こども(15歳未満)の数(#1:約1600万人)を上回った。

 

#1:総務省「我が国のこどもの数」より

 

「犬や猫にも血液透析が?」

もちろんペットも生き物であるため、その命には限りがある。終末期には人間同様に病に倒れ、亡くなっていく。その病の一つのして、犬・猫にも腎不全が存在する。

原因は様々で、糸球体腎炎・腎盂腎炎や加齢、また猫の場合だと猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスなどがある。

治療法の一つとして、腹膜透析や血液透析がある。腹膜透析は主に急性腎不全に適応され、人間同様に腹膜を利用して治療でき、自宅でも行うこともできる。

一方、血液透析を行うには、人間同様にブラッドアクセスが必要である。さすがに人間と同じく、シャントを作るわけにはいかないので、犬・猫の場合、ダブルルーメンカテーテルが用いられる。

 

「コスト面など問題点がたくさん。」

実際に血液透析を行うためには、透析装置・ダイアライザー・回路の他にヘパリンなど、使用する物品は人間と似ている。透析装置は動物専用に設計されており、とても高価なものである。もちろん保険などないため、人間でも1回あたり、数万円する治療費(人間の場合、一回あたり4時間で2010点=20100円)を、飼い主が全額負担するのは、かなり厳しい。また人間と異なり、ブラッドアクセスに使用できる血管が少ない。

こういったことから、犬や猫の血液透析は短期的な治療法として考えられている。

つまり犬や猫に血液透析を行うということは、云わば「延命治療」であり、コスト面など考えると、そう長く行えるものではない。

 

「あなたはどちらを選択しますか?」

慢性腎不全は決して治ることがない病気である。人間の場合、健康保険を利用し、治療費の面では、国よるサポートがある。またブラットアクセスに関しても、選択肢は犬・猫に比べると多い。

高額な治療費を投じて、一日でも長く時間を共にするか?。

無言で苦しみ続けるペットに一日で早く楽にさせてあげるか?。

 

家族同然ともいえるペットに「あなたはどちらを選択しますか?」