透析室は臨床工学技士が支配する
先日、学生時代の友人と飲む機会があった。
彼もまた、私と同じ透析に従事する臨床工学技士である。
ついつい仕事の話になるのは、ごく自然なことだがその彼からとても興味深い話を聞いた。
「透析室を臨床工学技士で支配する」
チーム医療と呼ばれる昨今で、わざわざ病院内の一大勢力である看護師に喧嘩を売るなんて
恐怖を感じるが、これにはきちんとした訳があるらしい。
彼の勤める関東近郊の病院は腎・泌尿器を専門としている。
透析室を多数あり、臨床工学技士の在籍人数も60人超とかなりの大所帯だ。
その病院は近年、ある問題を抱えている。
「看護師の高齢化」
私の病院でも同じことだが、透析室に在籍している看護師の年齢層は高い。
むしろ20代の看護師なんて、存在しないと言った方が正しいかもしれない。
単なる「看護師の高齢化」だけならまだしも、
日本には"年功序列"制度が存在するため、「看護師の高齢化=人件費の増大」となる。
社会保障費が膨らみ、医療費削減と言われるなか、透析治療にも削減対象となる。
少し前の話だが、慢性維持透析の診療報酬の改定やダイアライザーの償還価格の変更に伴い
病院の収入は下がるが、人件費は上がり、経営を圧迫する。
こういった現状を打開するための策として、あげられたのが
「透析室を臨床工学技士が支配する」である。
とは言っても、全員臨床工学技士にするのではなく、
あくまでも、配分(看護師:臨床工学技士=7:3)を(看護師:臨床工学技士=3:7)に変更することである。
看護師に比べ、平均年齢の低い臨床工学技士であれば
おのずと人権費も少なくなるし、そもそも基本給自体が低く抑えられている 。
しかし、「透析室を臨床工学技士が支配する」には沢山の課題がある。
その中でも特に問題なのは"独占業務"である。
臨床工学技士に認めれている医療行為は、看護師に比べ圧倒的に少ない。
むしろ透析業務以外は透析室内でないに等しい。
配分を変えることにより、3割になった看護師の負担が大きいため
いかに臨床工学技士が看護師の負担を軽くできるかが
「透析室を臨床工学技士が支配する」
という野望達成のカギなるのではないかと、私は思う。
また友人にあった時に、この野望の結末を聞きたいと思う。
私は、いち臨床工学技士として、臨床工学技士の認知度・業務拡大の為にも
ぜひ実現してほしいと陰ながら応援している。